ビースタイルスマートキャリアがAIマッチングを導入した背景
株式会社ビースタイルスマートキャリアは、企業担当のRAと求職者担当のCAによる分業体制を見直し、一人の担当者が企業と求職者の双方を支援する両面営業体制へ移行しました。
目指したのは、企業から得た情報と求職者から得た情報を、一人の担当者が直接結び付けることです。一方で、担当者の業務範囲が広がれば、求人探索や提案準備にかかる負担も増えます。
特に課題となるのが、担当者の経験や知見を生かしながら、保有求人の中から求職者に合う可能性のある求人を幅広く検討候補に挙げることです。
同社は、両面営業への移行を支える仕組みとして「a-assi(エーアシ)AIマッチング」を導入しました。本記事では、体制変更の背景、導入前に想定していた課題、サービスを選んだ理由、導入後に感じている価値について、株式会社ビースタイルホールディングスの田口様、小林様に伺った内容を紹介します。
ビースタイルスマートキャリアとお話を伺ったお二人
株式会社ビースタイルスマートキャリアは、ビースタイルグループの一員として、人材派遣や人材紹介など、多様な働き方を支える人材サービスを展開しています。
今回お話を伺ったのは、株式会社ビースタイルホールディングスのビジネス推進本部に所属する田口様と小林様です。
田口様は、本部機能を管掌し、新規事業・既存事業の開発、AI活用、DX、クロスセルなど、グループを横断する施策を推進しています。人材紹介事業のマネジメントにも携わり、営業、新規事業、経営・事業企画、システム開発、マッチングなどの経験をお持ちです。
小林様も同本部に所属し、田口様のもとで各種業務の推進を担当しています。人材紹介に関する業務にも関わり、現場に近い立場から事業を支えています。
同社が今回取り組んだのは、単なる求人検索の効率化ではありません。両面営業へ移行した後も、企業と求職者の双方を深く理解した支援を継続できる体制づくりです。
企業と求職者を一人の担当者が理解するため、両面営業へ
ビースタイルスマートキャリアがマッチングで大切にしているのは、入社時の条件だけでなく、求職者が入社後も長く活躍できるかまで考えることです。
田口様は、同社が重視する考え方について、次のように話します。
「求職者が入社後も長く活躍するためには、『働きやすさ』と『働きがい』の両方が欠かせません。その両立を実現できるマッチングを何より重視しています。」
その考え方は、求人企業へのヒアリングにも表れています。例えば、育児休業制度がある場合は、制度の有無だけでなく、実際の取得状況や取得期間まで確認します。時短勤務については、出社・退勤時間にどのような制約があるのかを聞き、フレックスタイム制度についても、コアタイムの有無や清算期間など、実際の働き方に関わる部分まで掘り下げます。
制度として利用できるかだけでなく、その働き方が求職者本人や家庭の状況に合っているか。入社直後だけでなく、その企業で中長期的に活躍できるか。同社は、そこまで理解したうえで求人を提案することを大切にしています。
従来は、求人企業を担当するリクルーティングアドバイザーと、求職者を担当するキャリアドバイザーが分かれていました。しかし、企業を理解している担当者と、求職者を理解している担当者が別々であれば、情報を引き継ぐ過程で、背景や細かなニュアンスが失われることがあります。
田口様は、当時の分業体制について、次のように振り返ります。
「担当者が分かれていると、企業と求職者、それぞれの考えや背景を十分に共有することが難しくなる場面があります。」
企業と求職者の双方を正しく理解したうえで支援するには、アカウントに責任を持つ一人の担当者が、企業対応から求人提案、選考支援まで一貫して担う方がよい。企業にも求職者を正しく見てもらい、求職者にも自身の経験や強みを正しく伝えてもらう。そのための場をつくるうえでも、企業と求職者の双方を把握する担当者が一貫して支援することに意味があると考えました。
こうして、リクルーティングアドバイザー・キャリアアドバイザーによる分業体制を見直し、両面営業体制への移行を決めました。
両面営業への移行前から見えていた、業務負担の増加
両面営業には、企業と求職者を一人の担当者が理解できる利点があります。一方で、一人が担う業務は増えます。
企業や求人について理解し、求職者と面談し、候補求人を探す。さらに、求職者と求人の適合性や懸念点を整理し、なぜその求人を紹介するのかを考え、求人の魅力を伝える準備も必要になります。
実際の求人提案では、検索条件に合う求人を並べるだけでは不十分です。一件ごとに、求職者のどの経験が求人とつながるのか、どのような点を魅力として伝えるのか、懸念点として何を確認すべきかを整理する必要があります。
求人票の要点を捉え、求職者との接点を整理するまでに必要な時間は、担当者がこれまで扱ってきた企業・業界・職種によって異なります。接点の少ない領域では、求人を詳しく確認し、提案の根拠や懸念点を整理するための時間がより必要になります。
両面営業への移行後も従来と同じ方法を続ければ、求人探索や面談準備に時間がかかり、企業や求職者との対話、提案可否の判断、選考支援に使える時間が減る可能性があります。同社は、体制を移行してから問題が表面化するのを待つのではなく、あらかじめ業務を支える仕組みが必要だと考えていました。
担当者の経験や知見を生かし、求人候補の幅を広げる
求人探索では、担当者は過去の成約実績や、理解の深い企業・業界・職種を起点に候補を検討します。これは、担当者の経験や知見を生かした合理的な進め方です。
一方で、保有求人が増えるほど、すべての求人を同じ深さで確認することは難しくなります。担当者がこれまで接点の少なかった企業や、得意領域以外の求人は、求職者に合う可能性があっても比較検討の対象に入りにくいことがあります。
そこで必要になるのは、担当者の知見を置き換えるのではなく、その知見を生かしながら、保有求人の中から求職者に合う可能性のある求人を幅広く検討候補に挙げられる仕組みです。
AIが求職者情報と求人情報を横断的に照合し、求人候補と判断材料を提示することで、担当者はこれまで比較対象に入りにくかった求人も確認し、最終的な提案可否を判断できます。
自社でも、求人候補を十分に広げられているか
次のような状態に心当たりはないでしょうか。
- 同じ求職者についても、担当者ごとに検討候補の範囲が異なることがある
- 過去の成約実績や、理解の深い企業・領域から検討することが多い
- 求人数が増え、すべての求人を同じ深さで確認することが難しい
- これまで接点の少なかった企業や領域の求人を検討しにくい
- 担当者によって、求人探索や提案準備にかかる時間に差がある
複数当てはまる場合、担当者の経験や知見を生かしながら、検討する求人候補の幅をさらに広げられる可能性があります。
AIに判断を任せるのではなく、人が判断するための材料を増やす
ビースタイルスマートキャリアが求めていたのは、AIにマッチングの最終判断を任せる仕組みではありませんでした。
担当者がすべての求人を一件ずつ確認しなくても、まず検討すべき求人候補を確認できること。さらに、求人名だけでなく、求職者と求人が適合している点、懸念点、紹介理由などを確認できることが重要でした。
AIが候補と判断材料を提示し、企業と求職者を理解する担当者が、最終的な提案可否を決める。この役割分担が、同社の考え方と一致していました。
自社でマッチングシステムを開発する選択肢もありました。
しかし、マッチングシステムは、一度開発すれば完成するものではありません。実務で利用できる精度までロジックを磨き、その後も求人・求職者データや利用方法の変化に対応しながら、継続的に保守・改善していく必要があります。
田口様は、こうした開発や運用に必要な時間と負担を踏まえ、自社でゼロから構築するのではなく、すでに実務利用を想定して開発・改善されているサービスを活用する方が合理的な判断だったとおっしゃっていました。
a-assi AIマッチングは、実際の業務での利用を想定した形で提供されているため、ゼロからシステムを開発するのではなく、自社の求人・求職者データを用いて、業務への適合性や出力内容を確認しながら導入を進めることができます。そのため、両面営業への移行に必要な仕組みを、短期間で現場へ取り入れられることも、導入を後押しする要因となりました。
また、すべての判断をAIに任せるのではなく、AIが求人候補や判断材料を提示し、最後は企業と求職者を理解する担当者が提案可否を判断する。こうしたAIと人の役割分担も、同社が必要としていた仕組みと一致していました。
候補求人と紹介理由を確認し、人が提案可否を判断する
インタビューで確認できた活用の核は、AIが提示した候補をそのまま求職者へ送るのではなく、担当者が内容を確認し、提案するかどうかを判断することです。
求職者の職務経歴や面談情報をもとにAIマッチングを実行すると、求職者と接点がある求人候補が一覧で提示されます。担当者は求人名や適合度に加え、懸念点や確認が必要な条件を見ながら、実際に提案すべき求人かを検討します。
求人ごとに、求職者の経験と求人との接点や、求人を紹介する理由、提案文面も生成されます。担当者は生成された内容を出発点として、企業について把握している情報や、求職者との面談で確認した希望を踏まえて内容を確認します。必要に応じて文面を調整し、最終的に担当者自身の判断で提案します。
候補を出すことはAIの役割ですが、企業や求職者の個別事情まで確認し、どの求人をどのように伝えるかを決めるのは人の役割です。
担当者自身では思いつかなかった求人も、検討候補に
導入後に同社が感じている変化の一つが、担当者の経験や知見を生かしながら、より幅広く求人候補を確認できるようになったことです。
担当者が自分で検索する場合、どうしても過去に扱った求人や、理解の深い企業・業界・職種が起点になります。一方、AIが求職者情報と求人情報を横断的に照合することで、担当者の経験や知見を補完し、これまで比較対象に入りにくかった求人も候補として確認できます。
候補に挙がった求人を、必ず求職者へ提案するわけではありません。それでも、一度候補として確認できれば、担当者は「この求人も提案できるかもしれない」と検討できます。
小林様は、担当者による求人探索の違いについて、次のように話します。
「担当者ごとに経験や得意領域が異なるため、候補として思い浮かぶ求人にも違いがあります。AIは個人の経験に左右されず幅広い求人候補を提示してくれるため、これまで比較対象に入りにくかった求人も確認できるようになります。」
担当者の経験や得意領域を生かしながら、これまで比較対象に入りにくかった候補を補う。ある担当者の中では自然だった着眼点を、別の担当者も求人候補として確認できるようにすることが、組織にとっての価値になります。
また、求人候補とともに紹介理由が表示されるため、担当者はその内容を参考にしながら、求職者への提案理由を整理できます。小林様は、この点について次のように評価しています。
「AIが求人候補とあわせて、その求人を提案する理由も提示してくれるため、担当者は内容を確認・整理しながら、企業・求職者双方に納得感のある提案をしやすくなります。」
求人を読み込み、提案理由や懸念点を整理するための準備負担を軽減し、AIが提示した内容を出発点として、求職者との対話や提案可否の判断に集中しやすくなります。
現時点では、工数削減率や提案数、決定率などの定量評価は、今後の検証課題です。一方で、担当者の経験や知見を生かしながら、確認できる求人の範囲を広げるという定性的な変化は見え始めています。
AIと人の強みを組み合わせ、両面営業を支える
両面営業では、担当者が企業と求職者の双方を理解し、自ら判断できることに価値があります。一方で、保有求人が多い環境では、担当者の経験や知見だけですべての求人を同じ深さで確認することは難しく、確認できる求人の範囲や準備に必要な時間に差が生じることがあります。
そこでAIが、求職者情報をもとに求人候補と紹介理由を一定の基準で提示し、担当者の判断を支えます。AIの役割は、唯一の正解を決めることではありません。担当者が確認すべき候補を広げ、提案可否を判断するための材料をそろえることです。
一方、人の役割は、企業や求職者との対話から得た情報や、それぞれの個別事情を踏まえ、どの求人をどのように提案するかを決めることです。
田口様は、AIと人の関係について、次のように話します。
「AIと人、それぞれの得意なことを組み合わせることが大切だと考えています。」
担当者ごとの経験や得意領域を均一化するのではなく、それぞれの知見を生かしながら、これまで比較対象に入りにくかった候補も組織として確認できる状態をつくる。AIと人がそれぞれの強みを生かすことで、企業と求職者の双方に向き合うための時間と判断材料を確保しやすくなります。
AIが広げた候補を、人が確かめて提案する
今回の事例から見えてくるのは、AIマッチングの価値は、人の判断を置き換えることではないという点です。
担当者が知っている求人だけではなく、これまで思いつかなかった求人も含めて候補を広げる。そのうえで、企業と求職者を理解している担当者が、提案するかどうかを判断します。
ビースタイルスマートキャリアが両面営業へ移行したのは、企業情報と求職者情報を一人の担当者が理解し、より一貫した支援を行うためでした。AIは、その担当者が企業や求職者と向き合い、最終判断を行うための材料を増やす役割を担っています。
田口様、小林様、このたびは貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
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